90年の歴史の中で変わらず受け継がれる漁法が
高品質なアナゴの秘訣
宮城県内では古くから行われているアナゴ漁。年間300~600tの水揚げがあり、実は全国トップクラスの水揚げ量を誇る隠れた名産地となっています。「北限のアナゴ」や「牡鹿アナゴ」とも呼ばれ、築地市場等で高い評価を受けている一方で、県内には出回ることが少ないので、意外にも県民にはあまり知られていません。
県内随一の水揚げ量を誇る石巻市表浜地区でアナゴ漁が始まったのは、約90年前の大正時代末期。当時から変わらない漁法は、暗く狭いところを好むアナゴの習性を利用したアナゴ筒漁です。筒状の漁具におびき寄せるこの方法は、同じくアナゴ漁に用いられる底引き網漁とは違い魚体を傷つけないのがポイント。ストレスに弱く、味が落ちやすいアナゴにはぴったりの漁法です。アナゴ筒漁で獲られたアナゴは、寿司屋や料亭でも重宝される絶品です。
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恵まれた環境で育つ宮城県のアナゴ。
大きさも脂のりも格別です
量・質ともに有数のアナゴ生産地である宮城県。その秘訣は地形です。仙台湾は親潮と黒潮がぶつかる潮目に位置し、プランクトンが豊富で、多くの生物が活発に活動している世界でも有数の漁場です。南西諸島の南の海域で生まれたアナゴの仔魚(レプトケファルス)は黒潮に乗って北上し、日本各地の沿岸域に着き、そこで1~2年かけて皆さんが知るアナゴに成長します。宮城で獲れるアナゴは穏やかな海を好み、湾に生息する多種多様な生物をエサとするアナゴ。抜群の環境で育つ仙台湾のアナゴは、大きさと脂のりが別格です。また、仙台湾で獲れるアナゴはほとんどがメスですが、メスはオスに比べてよく成長し、形も美しいのが特徴。仙台湾のアナゴが高品質である理由の一つです。
北日本の一部ではアナゴのことを「ハモ」と呼ぶ地域もあり、アナゴ筒漁も「ハモ胴漁」と呼ばれています。
アナゴの水揚げ量は2~6月に黒潮に乗ってやってきたアナゴの仔魚の来遊量によって左右さるため、宮城県では安定的かつ持続的にアナゴが獲れるよう、30㎝未満のアナゴは漁獲しても、再放流するなどの資源保護に努めています。
アナゴの旬は6月~8月。その期間に水揚げされるアナゴのなかでも腹部が飴色(黄金色)に輝いているのがおいしいアナゴです。
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