家庭で親しまれ、料亭でも珍重される高級魚。
その食味は、コイ科魚類の最高峰とも称される。
春に生まれ半年で10cmほどにまで成長する、コイ科の琵琶湖固有種ホンモロコ。モロコの仲間は琵琶湖に複数生息していますが、漁師が単に「モロコ」と呼べば、このホンモロコを指すことがほとんどです。雑魚として扱われがちな他のモロコに対して、ホンモロコは「コイ科魚類で最も美味」とも称される別格の魚で、昔から京都の料亭でも供される高級魚であり、湖国の食卓でも広く愛されてきました。平成および令和の大嘗祭(だいじょうさい)では庭積机代物(にわづみのつくえしろもの)として「焼きホンモロコ」を献上しており、まさに滋賀県が誇る魚といえます。
身は淡白な白身で、脂はくせがなく上品。秋ホンモロコの味を楽しむなら、まずは素焼きです。脂の乗ったホンモロコは頭を下にして網に刺して素焼きすると、身から滴り落ちた脂で頭がカリカリに焼け、旨みと香ばしさが口いっぱいに広がります。もちろん佃煮や揚げ物にしても美味しい魚です。
ホンモロコはかつて琵琶湖中で見られ、春のホンモロコ釣りは湖国の風物詩と呼べる遊びでした。漁獲は安定して年間200トン以上を維持し、県外への出荷も盛んでしたが、平成7年頃から漁獲量が激減し、一時は10トンを切るほどに落ち込みました。原因は外来魚による食害や産卵繁殖場の減少、瀬田川洗堰の水位操作による卵の干出などと考えられ、影響の大きい南湖では稀にしか姿を見ることができない時期もありました。しかし、外来魚の徹底的な駆除や水位操作に対する粘り強い訴えかけ、禁漁区の設定や種苗生産放流等といった長年の努力を経て、令和に入るころから産卵量が増加に転じ、漁獲量も徐々に回復しつつあります。ここ数年は毎年春になると「ホンモロコの産卵回復」の明るいニュースが報じられ、南湖でも釣り人が竿を出す風景が再び見られるようになりました。
※クリックして拡大