鯛よりも珍重されるというプリップリの白身魚。
脂がのった旬のアコウは、知る人ぞ知る高級食材
今治市の来島海峡は、「一に来島、二に鳴門、三と下がって馬関の瀬戸」と称されるように、船の舵が効かなくなるほどの速い潮流と、豊富なプランクトンや小魚に恵まれ良好な食物連鎖が繰り返される絶好の漁場。この場所で獲れる鯛の仲間・アコウ(キジハタの別名)は、地元で「幻の魚」と言われる魚です。幻と言われる所以は、その来島海峡に生息し、夏の一時期にしか獲ることができないため。さらに、夜行性のアコウは海底の岩の隙間に棲み、警戒心がとても強く、潮の流れが少し変わるだけで釣れなくなってしまうという敏感な性格も持ち合わせています。このように漁獲が非常に難しく、市場に出回ることが少ないため地元では昔から重宝されてきました。
プランクトンや小魚に恵まれた海で貯えられた脂と、激しい潮流によって引き締まった身は、白身でありながら深い味わい。刺身や煮付け、さらには鍋物にしてもおいしく、頭や中骨からは良質の出汁が出るため、味噌汁やお吸い物にしても格別。高級食材として珍重されるのも納得の、堂々たる味覚です。今治地方では、一匹丸ごと刺身にした「アコウの活き造り」「アコウめし」「アコウの煮付け」などが郷土料理として食べられてきました。近年では高級食材として、魚価所得の向上と、来島海峡周辺の地域振興に欠かせないものとなっています。
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