漁師の熱い想いと技術を尽くして漁獲される自慢の魚。
長い年月を通して愛されるその味は格別です
朝干(あさび)とは。夜明けごろに干潮を迎えるころのこと。岡山では朝が干底になるのは大潮のとき。大潮には、鳴門や豊後水道から強い潮が流れ込み、それに乗ってさわらがたくさん入りこんでくる。さわらも活発に泳ぎ、網にかかる量も多くなる。さらに夜明け前が干潮の潮止まりとなるので網を揚げるとすぐに港に水揚げし、競りに間に合うタイミングで中央卸売市場に出荷される。漁場から食卓までの距離と時間は、おそらく全国最短。
岡山のさわら漁師は使命感とプライドを持ってさわら漁に臨みます。岡山県民が待ちわびる春の便り「魚縞(うおじま)」のメインランナー「朝干(あさび)のさわら」を届けるために。
「そりゃあ朝干(あさび)のさわらが一番じゃ。さっきまで泳いどったのがぐしゃっと網に突き刺さって気が付きゃ夜明けの市場に並べられ、売られて買われて刺身にされて、見てみいあそこで親父が食よおるがな。」
さわらは身の柔らかい魚です。刺身での消費がメインの岡山では、その身質の良し悪しが値段に響きます。漁師や市場の人々のさわらの扱いは格別で、船の上で網に刺さったさわらを網からはずすときも、体を握って引き抜くようなことは絶対にありません。網から外したさわらは、締めて血抜きをした後、頭から尻尾まで延髄に針金を通し「神経抜き」(延髄を破壊することで魚体の自己消化を止める)。その後、海水氷に漬け込みます。
「わしらはさわらの扱いを見たらそいつが素人かどうかすぐわかる。尻尾をもってぶら下げとるような奴は素人じゃ。」「さわらは両手で抱いてやれ。」
岡山のさわら食文化には古い歴史があり、かつて江戸時代初期に使われていた岡山城の台所跡で発掘調査を行った折、ゴミ捨て場跡からカキやハマグリなどの貝殻や瀬戸の小魚とともに、さわらの骨がたくさん出てきたそうです。
以前は瀬戸内や豊後・紀州の浜ではさわらが獲れると「岡山が揚がった」というほどで、ほとんどが岡山市場に出荷されていました。近年、全国で漁獲されるようになり、各産地で消費されるようになりましたが、今でも春の消費量は岡山が全国一。さしみやたたき、いりやき(さわらのすき焼き)、白子と黄にらの白味噌汁、真子と筍、さやえんどうの煮付けなど、地元ならではの味わい方がさまざまで、産卵が終わるまでの春の2ヶ月間、さわらを味わい尽くします。
春に岡山においでの折には、ぜひ岡山産「朝干さわら」をご賞味ください。和洋にかかわらず市内の料理店の店先に「さわらあります」の看板を見つけたら、お店の方と「朝干(あさび)のさわら」の話題で盛り上がってください。きっと岡山人の「さわら」への熱い思いとプライドを感じ取っていただけると思います。
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