祭りの魚として徳島県民に親しまれるボウゼ。
秋の食卓に欠かせない美味しい魚
夏から秋祭りのころ、決まったように徳島県沿岸に来遊して漁獲されます。徳島県では秋祭りの時期にボウゼの寿司を好んで食べるため、県民のイメージは「祭りの魚」です。タイやハモのような高級魚ではありませんが、身近な魚として好まれ、強めの酢で締めて押し寿司にしたものは、徳島県独自の食文化であるといえます。上品な脂肪がまろやかな甘みを醸し出し、一緒に合わせた徳島名産のスダチやユズの香りは、さらにそれを引き立てます。
徳島では「ボウゼ」と呼ばれますが、標準和名・学名はともに「イボダイ」。鰓後方にある黒い斑紋が、灸(やいと)でただれた「疣生(いぼお)」に見えることが、この名の由来とされています。この斑紋は、鮮度を見分けるポイントにもなっており、濃くて明瞭なほど新鮮だとされています。小型魚ながら、頭と内臓が小さく可食部が多いのでお得感があります。一方、大きいものは脂が乗り、贅沢感を味わうことができます。
ねっとりした粘液が、体表に塗られたバターのように見えることから、英名は「ジャパニーズ・バターフィッシュ」と呼ばれます。日本では、クラゲを食べることから「クラゲウオ」、身がもちもちしていることから「モチウオ」、下顎が丸いことから「アゴナシ」など、イボダイの特徴を表したさまざまな地方名で親しまれています。
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