三重の漁村の生活に深く根付くブリ漁。
北の海で栄養を蓄えた身は、しっとりと脂がのり美味
冬から春にかけての盛漁期になると、三重県の漁村はブリの来遊を今か今かと待ちわびます。ブリ定置網は、三重県の漁業者の経済を支える重要な産業として各地の漁村に根付き、生活・文化・風習とも深くつながる漁業です。そのため、網をもつ民家では、ブリをさばくための大きなまな板が一家に一枚常備されているほどです。産地では、大漁祈願の神事や、三重県産ブリをPRするための直販イベントが行われています。また、明治16年に発刊された三重県水産図解には、三重県内では熊野灘沿海が「鰤の漁村」として挙げられています。「漁候:三月ヨリ五月迄ヲ良季トス味ヒ亦美ナリ」(3~5月が良季で、また、味も美味しい)とあり、当時も春が旬であったことが伺えます。
春に獲れる丸々と太ったブリは、北の海で栄養を蓄え、産卵のために熊野灘に来遊してきた群れだと推測されています。地元では以前からおいしさがよく知られていた熊野灘の天然ブリ。脂質含量計を使って旬のブリの脂ののりを測定したところ、15%以上の非常に高い値を示す個体が大部分であり、中には30%程度の非常に脂の乗った個体も漁獲されます。季節の移り変わりとともに脂の量は変化しますが、旬以外の時期は食べ飽きないさっぱりとした味わいが魅力的。卵や白子も味わえます。
門出の季節に「春ぶりの贈呈」
三重県尾鷲市では、令和4年度から、ブリが「出世魚」であることにちなんで、新規採用職員に旬のブリを贈呈する取り組みが行われています。令和5年度からは、尾鷲市と同じく、春にブリが水揚げされる高知県室戸市でもブリの贈呈式が行われています。
「みえ春ぶり宣言」
令和5年度から、三重県の定置漁業者、漁協、系統団体、行政などで構成される熊野灘ぶり振興協議会を設立し、旬の春ぶりの水揚げが本格化する時期を、全国の消費者に知ってもらうべく、「みえ春ぶり宣言」の取り組みを始めました。
熊野灘で漁獲されるブリの脂肪含有量 三重県の春ぶり取扱い業者一覧
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